前前回「初級編」ではデータをダウンロードしてエクセルで人口ピラミッドをつくってみるところまで、前回「中級編」では人口ピラミッドを並べて「人口の波」をみるところまでやってみました。
今回「上級編」では「人口の波」を「重ねて」みることで、僕の住む室蘭市を例にさらにまちの特徴を読み解いていこうと思います。
今回使用するデータ
今回は細かい年齢の差をみてみたいので5歳階級人口ではなく、各歳階級人口のデータを集めます。
(古い年代の各歳階級のデータはみつけられませんでした。残念!)
データ | データがあるところ |
1985年、1995年、2005年、2015年の室蘭市の国勢調査各歳階級人口 |
※このページから各年の市区町村別の各歳階級人口をがんばって探してください |
エクセルデータを加工してグラフにする
集めたデータはこんな感じに加工しましょう。
で、これを折れ線グラフにするとこんな感じになります。
4時点の人口の波を重ねて読む
ではこのグラフからまちの特徴を読んでみましょう。
まずわかりやすいのは、団塊の世代の動きですね。30年前35歳前後の働き手の中心が徐々に室蘭を去るとともに高齢化していってるのがわかります。
つぎに15歳以下の人口をみると、30年前は団塊ジュニア前後の世代が多くいたのですが、その後は一気に少子化が進んでいるのがわかります。
そして室蘭市の特徴としては室蘭工業大学の影響があるかと思います。どの年代でも20歳前後の人口の山がみられます。しかし彼らの多くは卒業後室蘭を去ってしまいますので、一時的な人口ボーナスといえるでしょう。
さらにエクセルデータを加工する
4時点の人口の波をさらに加工し、同じ年生まれの人が年代によってどう人口を変化させているかをみてみます。
10年前のデータを10年分、20年前のデータを20年分、30年前のデータを30年分スライドさせます。
で、これを折れ線グラフにするとこんな感じになります。
4時点(同い年生まれ)の人口の波を重ねて読む
ではこのグラフからさらにまちの特徴を読んでみましょう。
まずグラフの見方ですが、横軸が現在の年齢、縦軸がその現在の年齢の同い年の人たちがそれぞれの年代で何人いたかを示しています。
例えば現在65歳の同い年の人たちは約1,900人いますが、10年前は約2,000人(=この10年で同い年が100人室蘭を去った)、同様に20年前は約2,200人、30年前は約2,700人いたといった具合です。
市内の同い年のメンツが変わる時期といえば、やっぱり中学卒業から大学卒業→就職の時期のだいたい15歳から25歳の間ですよね。
例えば現在45歳(団塊ジュニア)の同い年の人たちはこの20年(25歳〜45歳)ではさほど人口を減らしてません(=ほぼ同じメンツ)が、30年前〜20年前(15歳〜25歳)の間には約1,000人、割合にして約4割人口を減らしています。市内の就職口がなくてやむなく多くの若者が室蘭を去っていったことが想像できます。
同様に現在35歳をみると、15歳〜25歳の間に約400人、割合にして約3割人口を減らしています。
他方、現在25歳をみると、15歳〜25歳の間では人口が変わっていません。これはどう読んだらよいでしょうか。昨今の売り手市場を示しているということでしょうか。入れ替わりがあるにしても、中学校の同級生が25歳になってもみんな地元に残っているというような感じですよね。本当?
参考図書
この本を読むまで、人口の波を重ねてさらに同い年生まれでそろえるグラフなんてみたことも聞いたこともありませんでした。たまげました。どの自治体でも人口の分析とかはやってますが、このグラフで分析してるとこなんてなかなかないのではないでしょうか。
人口の話の他にも人口縮小時代の都市計画や都市のスポンジ化の考え方など、わかりやすくためになる本でした。おすすめです。