前回初級編ではデータをダウンロードしてエクセルで人口ピラミッドをつくってみるところまでやってみました。
今回中級編では、これを応用して「人口の波」というものでまちの特徴を読む方法を、僕の住む室蘭市の例でご紹介したいと思います。
過去と将来の人口データをゲットする
今回使用するデータはこちら
データ | データがあるところ |
1955年、1975年、1995年、2015年の室蘭市の国勢調査5歳階級人口 |
※総務省e-Stat 政府統計の総合窓口には、市区町村・5歳階級レベルだと1980年以前のデータがありませんでした!(僕が探した限り) |
2035年の室蘭市の将来推計5歳階級人口 | 国立社会保障・人口問題研究所|日本の地域別将来推計人口(平成25年3月推計) |
エクセルデータを加工する
集めたデータはこんな感じに加工しましょう。
人口の波のグラフをつくる
「人口の波」は複数年代の人口ピラミッドを並べることでつくることができます。
がんばってこんな感じでつくってみましょう。
人口の波を読む
団塊の世代(水色)と団塊ジュニア(黄色)の動きをみると人口の波はだいたい読めます。
年代順にグラフをみると、団塊の世代が波の前線にいて全体を引っ張っていってるけど、だんだん人口全体が減少して元気がなくなっているようにみえますね。もうこれが室蘭の特徴といってもいいでしょう。
ではもう少し細かく年代を追ってみてみましょう。
S30年/1955年|60年前
団塊の世代が5〜9歳のころです。きれいなピラミッド型ですね。
お年寄りは少なく、子どもが中心の社会だったと予想されます。小学校も教室を増やさなければならなかったでしょう。
新卒世代が定年退職世代よりも圧倒的に多く、右肩上がりの成長が期待されていたことと思います。
S50年/1975年|40年前
室蘭市の人口はこのころすでにピークを迎えています。団塊の世代は就職・結婚し、かわいい団塊ジュニアが生まれたころです。
住宅の建設ラッシュもこの頃で、平地が少ない室蘭では、大規模な宅地開発が行われたり、山の上へ上へと急な斜面であっても住宅が建設されていきました。
上司にこのころの話を聞くと、頻繁に繁華街に繰り出し、給料をほとんど酒に使っていた人も多かったといいます。繁華街は肩がぶつかり合うほどにぎわっていたそうです。現在からは想像もつきません。
H7年/1995年|20年前
ここからは1981年生まれの僕も知っている世界です。
1980年代に室蘭の基幹作業である日本製鋼所と新日本製鐵の大規模な合理化があり、この20年間で15.9万人から11.0万人に大きく人口を減らしています。グラフを比較しても全体的に元気がなくなっているようにみえます。
新卒世代と定年退職世代の人口をみるとほぼ同数で均衡がとれています。団塊の世代は会社でもいいポジションとなっていき、団塊ジュニアも就職をしたころです。
H27年/2015年|現在
そして現在。さらに人口を減らし、団塊の世代が定年退職し、高齢者の世代に突入しました。働いていたときに比べれば消費も少なくなっていくでしょう。
定年退職世代よりも新卒世代の方が人口が少なくなっていますが、実際、市内各企業でも採用を募集しても思ったように応募者が集まらない状況です。
室蘭市には室蘭工業大学(学生3,000人くらい?)があるので、かろうじて20歳前後に小さな人口の山ができています。団塊ジュニアのジュニアも数は少ないけどちょうどこの世代ですね。
また、40年前の建設ラッシュで建てられた住宅のうち、立地や建物自体の状態が良くないものは、どんどん空き家になっていってます。
H47年/2035年|20年後
将来予測なのであまりあてにはならないかもしれませんが、現在の人口構成から予測すると将来はこれくらいなるということです。 (室蘭工業大学の特殊事情があるので、実際には20歳前後にもう少し山ができるでしょう)
人口の波を引っ張ってきた団塊の世代はもう85歳、団塊ジュニアももう60歳を迎えます。ここまでくればもう高齢化率も頭打ちとなり、人口減少も緩やかになっていくでしょう。
人口の波が緩やかになれば、団塊の世代の波のように、やれ学校をつくらなきゃ、やれ消費を満足させなきゃ、やれ宅地を用意しなきゃ、やれ老人ホームをつくらなきゃといった急な変化に対応しなければいけないこともなくなるので、それほど悲観的にならず、人口規模に合わせたまちづくりを進めていけばよいのだと思います。
しかし、1955年、1975年のころと比べるとずいぶんと人口を減らしましたね……。
もうお腹いっぱいですが、次回は補足的に、「人口の波」を「重ねて」みることで、さらにまちの特徴を読み解いていこうと思います。
参考図書
「人口の波」の考え方はこちらの本で学びました。おすすめです。
デフレの正体 経済は「人口の波」で動く (角川oneテーマ21)
- 作者: 藻谷 浩介
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